テナント内装工事業では、テナント新規出店時の解体工事、テナント退去時の解体工事、テナント改装工事の解体工事のことをまとめて解体工事とさします。
それぞれの解体工事の説明とポイント、注意点になどを解説してきたいと思います。
テナント新規出店時の解体工事
テナント出店時の解体工事についてですが、図面を基に必要ない箇所を解体していくイメージとなりますが、出店時の解体工事では使う部分と使わない部分の明確な指示が重要になってきます。
着工前に必ず工事の近隣への挨拶回りと養生を行います。
その際に「この部分は壊す」「この部分は残す」「この部分は途中まで壊す」など把握している状態と、把握してない状態では工事の進捗に大きな差が出てくるので、しっかり把握していきます。
着工時には、図面を見ないで説明できるくらい頭に入っていれば最高です。
何故なら解体工事の際に予期せぬ状況が多々起こってくるので、モタモタしていると、そちらの対応が出来なくなるのです。
着工時、解体屋さんの番頭さんに現場の説明をして、解体はスタートしていきます。
予期せぬ出来事の多くは、壊す予定のない箇所まで壊してしまった、ではないでしょうか?
こちらの主な原因は打合せ不足になると思います。職人さんとて人間なので頭に入りきらなかったり、認識の違いはあります。解体を始める前にしっかりと打ち合わせをして工事を始めればスムーズに工事は進んでいくので指示と相違がないかしっかり確認して進めます。
また、中にはどうにもできない予期せぬ出来事が起きてきたりすることもあります。
- 筋交いが出てきてしまった
- 躯体が出てきてしまった
- 鉄骨が出てきてしまった
- 壊してみたら他のフロアの配管がテナント内を通っている
こういった際にはデザインが大きく変わってくることが多々出てきますので、施工側で臨機応変にと思わず、設計者とお施主様を現地にお呼びして、解決にあたることが一番かと思われます。
一番行ってはいけないことは勝手に判断し、何とかなるだろうと言う考えで進めていくことです。
小さな問題でも、放置しておくと後々大問題になるので、問題の発生時に必ず設計者と、お施主様に相談して進めることが潤滑に進めていくポイントになってきます。
テナント退去時の解体工事
こちらは全ての造作物を撤去し、スケルトン解体と呼ばれることが多いです。現状復旧と言われることもありますが、次の借主様がテナント、オフィスを出す際に負担を少なくする工事になります。
店舗契約時に契約書の内容でスケルトン返しなど記載されていることがあり、その契約内容を実行する工事になります。
ここでのポイントは契約内容をしっかり把握し、大家様、不動産屋様に細かく確認をとることが重要となってきます。
以前あったことなのですが、床は残して、天井壁を全て解体と言う内容で聞いていたのですが、実は大家様は床まで全て解体と言う認識だったなんてことがありました。
こうなってくると出戻り工事になり、お施主様の費用負担が増えていくこととなってしまいます。
こういったことを起こさないためにも「誰が」「どこまで」「契約書ではどうなっているの?」
と言った確認は怠らないようにしましょう。
テナント改装工事の解体工事
テナント改装工事に関しての解体工事、これが個人的には一番難しいと思っている解体工事です。着工までの流れは新規出店時の解体、退去時の解体と同じなのですが工事の勝手が全然違ってきます。なぜ難しいのか?
- お施主様の荷物が満載で残っているため、養生、荷物移動を安全に何度も繰り返さなくてはならない
- 使用箇所と解体箇所の線引きが難しい
- 短期改装になることが多く、工期がないため適切な判断力が必要
この3点につきます。
1.まず、改装工事なので、営業に必要な荷物は必ず残っています。
当然そのまま工事に入ると、工事に関係ない箇所も含め、お施主様の荷物は埃まみれになり、破損や紛失に繋がってくることは明らかなので、改装にかかわりのない箇所に荷物を移動し、養生を行います。
また、その日その日、その時間に工事を行う職人さんと相談して作業に関わりのない場所に移動させて工事をスムーズに行えるようにします。
荷物が多ければ多いほど非常に面倒な作業ですが、荷物を作業を行うスペースにそのままにして作業を行うより、仕上がりも当然クオリティが上がりますし、荷物に対するリスクヘッジにもなります。
2.こちらはどこまでどういう風に壊すと続きの工事、変更したい工事に繋げていくことが出来るのか非常に難しいので、解体屋さんと相談し、線引き箇所の手前まで壊してもらい、経験や知識が豊富な大工さんなど各職人さんに相談しながら進めていくことのほうがスムーズに進行すると思います。
解体屋さんは壊すプロ、大工さんは作るプロなので両方の意見を聞きながら進めたほうが良いでしょう。
3.基本的に改装工事では、営業している店舗様をお休みしていただいて作業するのであまり工事に日数をかけられないことが多いのが現状です。
特に出だしの解体工事で躓くと工事期間が足りなくなってきて、大変な事態になるので打ち合わせは念入りに行います。産廃の搬出タイミングなども次の工程に移るのにゴミがたまっている状態ではスムーズに進まないので注意が必要です。
よく職人さんから工期に関して「何でこんなに短いの?」と言った問い合わせを受けますが、お休みしていただく店舗様は営業しないと売り上げが立たないので、出来る限り詰めて工事の日程を希望されます。打ち合わせから参加させていただいている場合は「このくらいの日数を見てください」と言う会話が成立するのですが、極々稀に「4日工事でお願いします。昼夜交代してやれば24時間使えるから実質8日工事に出来るよね?」と言った猛者もいます。
ミスや怪我、当然仕上がりに繋がるので、断れるのでしたら出来る限り辞めておいたほうが良いでしょう。
解体工事で注意するポイント
内装解体工事での課題、問題視されることの多くは
- 解体工事の音出し時間の制限
- 解体廃材の搬出時間の制限
- 産廃回収車の車が現場周辺に停められるか否か
- 搬出にエレベーターは使えるのか
(作業中の怪我や事故に気を付けることは全ての工事を通して共通認識であり、当然なのでここでは省きます。)
1.音出し制限についてですが、雑居ビルの場合(近隣挨拶参照)ランチ営業、オフィスビルの場合、出勤退勤、そもそも日中音出しが出来ないなど様々な制限があります。制限の中で色々策を投じて工事を進めていくことになります。
解体工事が1番目の工事になりますので、幸先のいいスタートを切るためにも、しっかり近隣と調整を行って進めてくことが肝心となります。
2.こちらも上記に同様です。搬出時にはどんなに気を付けていても、必ず埃が出てきますし、汚れが足の裏について共用部が汚れます、搬出後の掃除は鉄則となりますので必ず行いましょう
3.産廃回収車が近くに停められるのか?これも地味なようで非常に大切なことです。現場の前に停車出来る場合は良いのですが、稀に500m横持ちしないとならない。何てこともありますので着工前にしっかりチェックしておくことが重要になります。
4.雑居ビルの多くは時間の制限を設ければ大体搬出作業にエレベーターを使わせてくれるのですが、マンションとなると不特定多数の住民様が使用されるので、「このエレベーターの10時から11時、14時から15時のみ使用できます」でしたり、「全て階段で手おろしといった」ことも出てきます。
問題は起きてから対処するより、事前に対処するほうが間違いないので事前に管理会社様などと打ち合わせて工事をスムーズに進めていけるようにします。
まとめ
テナント解体工事では、大まかに分けて、新規出店時の解体、退去時の解体、改装工事の際の解体とあります。怪我や事故に関しては当然ながら、周りへの配慮を充分に対策して工事を進めることが、工事の進行にもお施主様にもスムーズな流れとなります。